すみっコぐらし

感動と驚きと楽しさと。人形劇を超えた没入体験。すみっコぐらし パペットミュージカルレビュー

子供から大人まで大人気の“すみっコぐらし”、初の映画化作品である「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」が2024年8月16日~9月1日の期間で舞台化されました。
娘はすみっコぐらしが大好きなので、家族で観に行くことに。

妻も私も映画、舞台系は好きで、内心ワクワクしておりましたが、予想以上のクオリティに驚きと感動が溢れ出ました。

色んな人にこの想いを共有し、そして演出に関わった全ての人に感謝の意も込めて言葉にしていきます。
是非最後まで読んで行ってください。

まるで生き物。命を吹き込まれた人形達。

人形劇って想像の遥か上を行く「凄さ」があります。

まず、驚いたのは「人形達の動き」です。

手足や翼、そして身体全体の動き、視線、仕草、その全てが人形のものとは思えませんでした。
よく「命を吹き込む」という表現がありますが、まさにこの事だと感じた程です。

作品の特性上、基本的には「セリフ」と呼ばれるものがない彼ら(性別不詳)ですが、人形の動きや演出だけで喜怒哀楽や驚き、不安等あらゆる感情、思考までもが伝わってきました。
百聞は一見にしかず、これは観ていただく他ないのですが、本当に一挙手一投足が細かく、こだわり、洗礼されており、努力と愛を感じると思います。

また、驚くのは「動き」だけではありません。
人形達自体も作り込まれており、先程述べた「感情」や「思考」などを更に細かく表現しているんです。
手足が動くのは勿論ですが、瞬きをしたり、瞳が変わったり、物を持てるようになっていたり、この作品を創り上げるにあたって、表現し切れるポテンシャルを持っています。

そして、このポテンシャルを余すこと無く発揮させているキャストの方も本当に素晴らしく、感動しました。
一つ一つの動きが自然なんですもの。語彙力失いますが「凄い」の一言に尽きますね。

すみっコぐらし最大の魅力は、やはり「可愛さ」ではないでしょうか?
すみっコ達の人形単品でも本当に可愛らしく、魅力的です。
持って帰りたい程でした。

人形劇においては、動き出すことでより可愛らしく、イラストやアニメーションとはまた違ったを魅力を見せてもらった気がします。

映画では味わえない。人形劇ならではの演出。

「舞台」というものを指折り程度しか体験したことがない私ですが、魅力を言葉にするならば「没入感」だと考えます。

・平面の映像ではなく、実際に目の前で動いている人形達

・照明や音楽、SE(効果音)による演出

・セット、小物を用いた感情や情景の表現

更に、キャスト一人一人のコンデションや感情などから、厳密に言えば「毎公演違う」演出を楽しむことが出来る。
「その一回」「その一瞬」を身体全部で感じられるのが舞台であり、人形劇なのではないでしょうか。

昨今の映像コンテンツはとてつもない進化を遂げております。
映像でしか味わうことのできない良さはありますが、それと同じく、舞台や人形劇でしか味わうことのできない良さがあることを理解させられました。

また、本舞台ではオリジナルの映画には無い演出があり、舞台化ならではの楽しさと感動と特別感が味わえたのも大きな魅力だと思います。

舞台化だけに限らず、コミカライズ、アニメ化、ドラマ化など、それらに付いて回るのは「オリジナルとの乖離」です。
「あー、ここ変えちゃったか」「このキャラはもっとこうだよね」「なんか違うなぁ」
といったオリジナルへの愛着が強い故の心無い声をよく聞きます。

しかし、本舞台で感じたのは

「映画そのままじゃん」

これです。
映画をそのまま舞台に落とし込むとこうなるんだと感じました。

その映画まんまの舞台化の中で、舞台として楽しませるスパイスとして「ナビゲーター」と呼ばれる進行役、オリジナルの挿入歌とパフォーマンス、キャストと観客との掛け合いなどの要素が追加され、それらが作品自体と調和し、相乗効果を生み出しているのでしょう。

オリジナル作品を観ていたからこそ感じるものもありましたし、観ていなくとも人形劇として本当に感動する作品でした。

やはり素晴らしいシナリオ。そしてそれを表現出来る演出力。

改めて「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」、この作品の最大の魅力は「シナリオ」です。
これは映画、舞台共に共通するものだと思います。

作品中で垣間見えるすみっコ達の可愛らしさ、そして優しさは勿論として、シナリオが本当に素晴らしいんです。
特にクライマックスにかけて、物語が急加速し、核心に迫る部分では心が締め付けられ、気が付けば目の前が潤んでいることでしょう。

自分が何者なのか、何故ここにいるのか、存在意義は何なのか、作品の持つ可愛らしさとは裏腹に強いメッセージ性を持ち、考えさせられるシナリオなんです。
子供は勿論ですが、大人も別の視点と感性で楽しめる作品だと思っております。

そして、本舞台では、このシナリオの素晴らしさが余すことなく表現されていました
脚本、演技、セット、音楽、効果音...それらの要素全てが相まって、映画の持つ世界観がしっかりと創り上げられているんです。

まず、人形としてキャラクターを演じるキャストの方々ですが、動き一つで感情や思考が読み取れる、そんな自然な動作を可能にしている技量が凄い。
こんな話を先程しましたが、これに加えて感動したのは「キャスト自身の表情も変わっている」というところです。

キャストはあくまで人形の操作(夢がない表現になってしまいますね)が役割のはず。
しかし、実際に公演を観ていると、楽しいシーンでは笑い、悲しいシーンでは切ない表情を浮かべ、そのシーンでのキャラクターの感情とリンクしていたのです。

これって凄いと思いませんか?多分演じる上で自然と、そして必然的にそうなっているんだと思います。
キャラクターに身を投じている、演じる対象が自分自身からかけ離れている程難しいはずです。

また、作品の中でのBGMにも感動しました。
本公演では「すみっコ楽団」と呼ばれる演奏者の方々による“生演奏”で劇中の音楽が生み出されています。

ギター、ベース、ドラム、バイオリン、アコーディオンなど、多彩な色で創られた音楽は、演出により一層の臨場感と抑揚を与えており、観客までも舞台に引き込んでいるように感じました。

公演を観るまでは、生の演奏だと演奏の方が浮いてしまうのではないかと思っておりましたが、そんな事は全くありませんでした。

生であるからこそ、自然と心が踊り、舞台ならではの没入感が増幅されているんです。
そしてなにより、パフォーマンス自体がとてもカッコいい!

終わってみれば、疑っていたことさえ忘れていましたね。
本当に素敵でした。

このように演技や音楽を始め、このパペットミュージカルを構成する全ての要素が緻密に創られ、相まっていることで、映画の素敵すぎる世界観を余すこと無く表現出来ているのだと考えます。

映画もホントに素晴らしいので、気になった方はAmazonプライムビデオを覗いてみてください。

現在(2024.09.06)見放題なので、この感動を分かち合えると嬉しいです。


映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ

機会があるならば、絶対にまた観たい(まとめ)

本公演ポスター

「また観たいね」

終演後の帰路で家族揃って発した言葉です。
楽しく、可愛らしく、切なく、様々な感動を与えてくれる。

本当に、本当に素敵な作品でした。
願わくばもう一度観たい。

しかし、残念ながら期間限定の公演なんです...

叶うことなら、また公演してほしい。
リバイバル公演とか復活公演とか名前はどうであれ、またやってほしいんです。

更に言えば、映画2作品目も3作品目も是非舞台化してほしい。
最後の最後で欲ばかり書き連ねておりますが、本当にそれ程素敵な作品でした。

どうかこの言葉が届いてくれたら嬉しいなと切に願っております。

娘が“すみっコぐらし”に出会ってくれて、好きになってくれて、そして私も一緒に応援出来てよかった、そう感じる思い出の一つになりました。

下の写真は、帰宅後に娘が並べたぬいぐるみたちです。
作中で「友達の証」としてすみっコ達が頭に付けていたお花、これを折り紙で作って付けてあげていました。

ここまで読んでいただいた方には感謝しかありません。
本当にありがとうございました。

“ひよこ?”と“とんかつ&えびふらいのしっぽ”ぬいぐるみ(娘お手製お花付き)


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